物流よもやま話 Blog

鳥取砂丘コンテナ空港

カテゴリ: 余談

今年の夏季休暇はお盆から少しずらして取った。
下関から秋吉台を抜けて久しぶりに山陰路を巡ろうと、車での短い旅に出たのだが、急変する雨天曇天の合間を縫うように、訪問地では傘の出番がなかったことはありがたかった。
道路も宿も混みあっていなかったのは、休暇を遅らせたせいかもしれない。予定通りに目的地を回れただけでなく、想定外の寄り道をする余裕があったのも嬉しい誤算だった。

帰路は9号線をのんびり走り、夕暮れには帰宅できるように米子の宿を早朝に発った。海岸線にある何か所かの目的地を経てもまだ9時過ぎ。そんな時刻にもかかわらず、急激に上昇しはじめた気温を恨めしく感じていたが、実はそれ以上に気がかりなことが。
「まさか‘鳥取砂丘に行きたい’なんて言いだすのではあるまいか」と助手席の御方の特攻隊精神に密かにおびえつつも、表面的には呑気この上ない体でのどかな山陰路を走っていた。

やがてハワイ海岸にさしかかり、そこからはさらに風光明媚な山陰の海岸線が続く。浸食によって険しく削られた黄土色の岩壁と碧い海のコントラストが素晴らしい。
こんなに素晴らしいドライブの途中に、デカい砂場で汗まみれになるなどありえない・・・
「白兎ぐらいで勘弁してくれんもんかなぁ。とにもかくにも〝砂〟や〝砂漠〟などの関連単語厳禁。その先の浜坂で美味い魚を食うハナシを機関銃のように連射して、灼熱砂丘に折れる交差点を通過しなければ」と内心でひたすらに念じていた。
市中の気温が30度を超える日に、砂丘に立っているだけでも尋常ではない。
ましてや家人の性格なら、間違いなく「馬の背まで登って、日本海の雄大な景色を眺めたい」と言うに決まっている、、、、、
ジョーダンではない。
高温の夏季というだけでも憂うつ極まりないのに、なにゆえ目的なき苦行さながらに砂漠の小高い丘に登って、炎天下で丸焦げになるような自傷行為をせにゃならんのだ。

などと内心で独り言ちつつ運転していると、前方に道路掲示が現れた。《鳥取砂丘コンテナ空港 1.0㎞》と書いてある。
「そうか鳥取空港は海岸にあるのだった。わざわざ砂丘と付記する必要性の是非は置いておいて、〝コンテナ空港〟とはこれまた絶妙。過当競争から抜け出せぬままの旅客サービス一辺倒から距離をおき、貨物に特化した空港運営というわけか。なるほどなるほど秀逸ではないか。コロナ前から主張してきた自論を具現化している地方空港がやっと現れた。今後は国内の数多空港が同調追随すること必至だろう、、、」
などと内心大いに満足しつつ、ちょっと寄り道して空港見学などと、ご機嫌よろしく9号線を左折したのだった。

「私てっきり〝鳥取砂丘コンテナ空港〟だとばかり思い込んでたけど、そうじゃなくて〝コナン空港〟なんやねぇ」と左折してすぐに助手席から苦笑まじりの恥ずかしそうな声が。
な、なんだと?
コンテナではなくコナンと書いてあったのか。あっ!正面に名探偵コナンのイラスト看板がでかでかと、、、夫婦そろって9号線の標識を読み間違えたまま、妙な納得と思い込み。貿易の専門職である家人にしても〝コンテナ空港〟は航空貨物を取り扱う身として素直に腑に落ちる言葉だったのだろう。

というわけだったが、読み間違いと勘違いを恥じたのはほんの一瞬だった。
その後は揃って開き直り以外の何ものでもない反論や異論に終始。
「コナン空港よりコンテナ空港のほうが名実ともによいのではないか」
「同一県内にゲゲゲの鬼太郎と名探偵コナンのアニメ空港が併存すること自体どうやねん」
「旅客は鬼太郎に任せて、コナンは貨物に専一するほうが県として強みになるのではないか」
などと車中で騒ぎ始めるスットコドッコイ夫婦

のようなやり取りはほんの束の間で、コナン空港を過ぎてから「あっ、そこ左ね」と隣から出された指示に従い、路面矢印下に〝砂丘〟と書かれた車線に。ワタクシは砂丘駐車場の入口まで「いやじゃ~」とごねたが、そのまま炎天下の灼熱砂丘で予想通り〝馬の背〟を往復。
言うまでもないが過酷で生産性ゼロの耐久歩行だった。達成感や爽快感は皆無だったことも付記しておく。皆様はなるべく真似しないよう進言する次第だ。

しかしながらよろよろと砂丘を後にして、ふたたび眼前に展がる浦富海岸をはじめとする絶景と、兵庫県に入って浜坂漁港で食した絶品の魚介てんこ盛りのヒルメシなどによって、お互いの生業に係る熱いコンテナ空港議論や過酷な砂漠の民ごっこの末の罵りあいなどもどこかに消え失せてしまった。
まぁそれもいつもながらのことなのだが。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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