物流よもやま話 Blog

睡魔蛇行とスマホ見ながら走行

カテゴリ: 実態

長距離移動で高速道路を利用するたび遭遇するのは、大型車の「スマホ見ながら走行」と「うっつら睡魔との格闘蛇行」である。傍から観ていてもただただ怖いし、自損で済まずに巻き込み事故を起こしたら、取り返しがつかないことなど運転手自身がわかっているはずだ。
つい先日のことだが、前方を走る大型車両が小幅ながらも蛇行気味なのに気付いた。並走して運転席を見上げたら、ドライバー君が睡魔と闘いながら走行しているように見てとれた。
クラクションを鳴らそうかと迷ったが、すぐにブレなく直進し始めたので思いとどまった。

スマートフォンなどの端末を「見ながら」「片手に持って話しながら」の運転を、車両や道路の種別に関係なく結構な頻度で目にする、というのは読者諸氏も同じではないだろうか。
言うまでもなく一定要件を満たすハンズフリー通話を除く「ながら運転」は交通違反である。
大型車なら反則金25000円(普通車18000円)、違反点数3点。さらには、ながら運転で事故を引き起こせば非反則行為――もはや反則金を払って済むハナシではないよ、という意となり、罰則が適用(1年以下の懲役又は30万円以下の罰金)され、その違反点数は6点。つまり一発免停となる。

違反であることを認識しながらも業務連絡でやむなく受発信、という方が少なくない事情も承知しているが、はらむ危険性と受ける罰則の重さを今一度お考えいただきたい。
仕事のしがらみと人命や人身の貴さを天秤にかけるような行為は、世の中の迷惑となること甚だしいだけでなく、他でもない自分自身の人生を瞬時に棄てる愚行となりえる。

職業ドライバーのほとんどは素晴らしい運転マナーと順法走行を専らとしている。
なのに一部の不届き者のせいで、
「トラックの運転手には質が悪いのが多い」
などと、実態から大きくデフォルメされたそしり・さげすみの類を全体が被るはめになる。
――ということを今ここで述べるのであれば、冒頭に書いた先日の蛇行遭遇時には、即座にクラクションで注意喚起すべきだったのだ、と強く深く反省している。業界人各々が自他ともに律しなければ、全体向上は叶わないことを自身で再確認する出来事だったし、次からは迷いなく行動に移したい。

ながら運転には理性と倫理、居眠り運転には適正な労務と自己管理が処方となる。
健全とは言い難い実態を正しつつ、過剰なまでにゆがんでふくらんでしまった偏見や先入観を払拭することは、新たなる人材流入の呼び水としても不可欠である。
近年、車載機器の開発によって酒気帯びや運転者の異常検知は格段に進んだ。走行管理や車線維持などの運転補助機能はドライバー個々への依存度を減じさせて、運転技術の属人性を縮小しようとしている。それはそれでありがたい利器として大いに活用すべきだと思う。

が、はたして肝心要の人間たちの職業倫理や自尊心や誇りは誰が評価するのだろうか。
合理化や省人化は個性や熟練の排斥や均一化と同義ではない。無駄や旧態という名で十把一絡げに排除した一群を見返すことなく、どれがどれか区別のつかない似たような大きさで角のない粒ぞろいを眺めながら、管理者や経営層が「美しく調和がとれている」と安堵する。
私には「そんな光景は異様で恐ろしい」としか表現しようがない。

属人性の排除と職業倫理の向上やプロ意識の維持は背反しない。
それをいかように同居させて明日の物流の想を練るのか、が物流企業トップの本分だ。具体的な答えは千差万別で然りだろうし、方策として実用する段取りや体制整備に手間暇かかることも当然。ただし、考えたことがない・考えるつもりがない、は言語道断である。

考えるに際し、自社の車両が蛇行しながら走行している映像など思い浮かべたくはないにしても、「わが社では皆無である」などと宣う能天気な経営者にだけはなってほしくない。
永遠の理想たるゼロに近づくためになすべきは、車載機器に金を出すことなのか、人間の教育や採用に金を出すことなのか、はたまた両方同時なのか。

出すのは金だけにしておくほうが良いのか、生まれて以来一度たりとも慎んだことも我慢したこともない得意の「口を出す」を今回も添付するのか。
思案六法でもう一丁!
ひいた札の表には「やはり口を出す」、、、裏を返せば(五)の字が滲んで(誤)にも見える。

なんていう毒を吐いてはいけませんねぇ。

著者プロフィール

永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。

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