近年の物流施設の進化にまつわる今さらの詳細説明は不要だろう。
特に新築大規模倉庫は、最新の空調・照明設備、食堂や休憩スペース、売店、託児所などの従業員向け福利厚生面を充実させるための仕様を前面に並べての物件宣伝に努めている。
追随する既存施設も相応の改装や改築に注力しているわけだが、狙いとしては荷主の印象向上にとどまらず、従業員確保や雇用維持にまで拡がっている。
「どうかこらえてください。続ければ手が後ろに回ります」
そんな過去の一場面が突然脳裏に立ち上がり、しばらくして消え去った昨夜だった。
ちなみにこのような不意の回想は珍しくも稀でもない。時と場所と相手を変えて、いくつかの出来事の記憶が切り取られてよみがえる。
光回線難民状態のまま6月になってしまった。
わが家にはアンテナがなく、ネット回線が不通のままだとテレビが視聴できない。
朝のニュースもサラメシも青天を衝けも観ることができないし、チコちゃんに叱られることもなくなって久しい。車に乗るたびに「おぉ、テレビだ」と感激する毎日なのだが、夜に音のない暮らしも悪くない、と無理やり納得しようとやせ我慢する自分がもの悲しくもある。
めっきり春めいてきて、桜の報もあちこちから届く。
そしてわが国では始まりの時を迎える行事や機関が多い。
疫災によって例年通りのスタートを切れない学生や新入社員の諸君は気の毒で心が痛む。さらに悲惨なのは昨年の新卒者や新入生だ。一体いつになったら職場や学び舎で普通の活動ができるようになるのか。
物流の未来を想うとき、脳裏に浮かぶのは農業の歴史だ。
物流業界が直面している問題や課題、希望や期待の行く末の姿は、農業の今と訪れつつある未来形の中にあると思える。
狩猟依存から脱却した耕作文明は、やがて人類の生存を安定化する基盤となり、膨大で長久な時間の流れの中で、無数の曲折や進化を繰り返しながら今に至っている。
学んで考える対象としてはこの上ないだろう。
コボット達の増殖に圧され、人間の住まう場所は狭まってゆくだけなのか。
悲観とは別物の命運を想う気持が強まる。
自業自得のわが身の明日はさておき、若年世代やそのあとに続く子供たちの未来では、コボットや自律稼働する機器の進化と増殖は福音となるのか気がかりだ。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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