名門やら老舗と謳われる事業者の倉庫には倉庫職人と呼ぶにふさわしい管理統括や作業責任者がいた。大規模倉庫なら荷主別や区画別ごとに担当者が定められており、それぞれが責任と誇りをもって自分の担当する区画を管理していた。
いうまでもなく庫内における各区画どうしの競争意識は高く、作業精度や作業効率はもとより、清掃や挨拶や備品管理に至るまで「うちの区画が一番」という自信と自負をもって日々業務に勤しんでいた。
倉庫屋風に説明すれば「おもいっきり保管勝ちなので、高額荷役単価・高額運賃と高額保管単価でないと合わんなぁ」となるわけだが、あくまで倉庫業を営んでいる事業者ならば、という前提条件でのハナシである。読者諸氏ご承知のとおり、普通の倉庫業なら請求における保管料比率が3割超えたらもうシンドイはずだ。
「そのとおりです。なので社員やパートさん達の中には、午後から出勤する方もいますよ」
という回答が返ってきて、驚きつつ納得もしたのだった。
終始コンパクトに収めて、運動会ステークホルダーの時間的物質的負担を軽減するように努められている――それに異を唱える声も少ないのだろう、、、と思っている。
国際規格コードで作成された商品マスターが在れば、物流業務に言葉は要らぬ。
合理的な業務フローと簡素で短絡な作業手順があれば、無言とまでは言わずとも、カタコトや手振り身振りでも業務コミュニケーションは可能になる。
優れた物流作法は人種や性別や年齢を選ばない。つまり国境は妨げにならぬということだ。
「貴方の属する物流部門では、一年間の業務総括を毎年作成していますか」
私の関与する先には必ず作成していただいている。
名称は会社それぞれでよいと思うが、中身は統括者(部門責任者もしくは管掌役員)の当年度概況と総括、自社の物流統計と業務フロー及び作業手順書・人員体制、、、
こういう状況下で物流部門ができることは「普段どおり」のルーティンをひたすらに突き詰めてゆくしかない。コロナ禍を経ての今に至るまで「普段」の中身を徹底的にそぎ落として効率化を合理化に結び付けてこなかった現場は遅きに過ぎていると酷評されてもいたし方ない。
顧客満足の仕上げであり、主たるコストセンターのひとつである物流機能が合理化の追求を今になって始めるなど論外、は私が小言を吐くまでもないことだ。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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