確かにプロとアマの違いを“できたこと・できていないことの数え方”で説明してきたが、併せて「プロはできそうもない事案は手掛けない」ことも添えたはずだ。
つまり勝てる喧嘩しかしないし、その見立てこそが玄人たるゆえんなのだ。
加えておきたいのは、できていないことを数え見限る玄人の厳しさと仕上がりへの執念を支えるモノは精神的な安定と自己肯定の厚い下地なのだと今一度ご理解いただきたい。
私には起点となる「自分」がなかったのだろう。起点がないのだから走っても歩いても跳んでも這っても、「どれぐらい進んだのか」が自他ともにわからない。
なので自身では「あれもこれもぜんぜんできてない」、他者からは「いつも忙しそうだ、ということ以外はよくわからない」となってしまっていたのかもしれない。
「強い物流」という言葉を至上とみなして内心に掲げ、今までヒィヒィぜぇぜぇ励み、ブツブツと小言をつぶやいてきた。
この言葉が好きな理由は、関与する事業者によって「強さ」の中身が千差万別であるからだ。そして規模や数量などの比較だけでは評価できない価値観であることもしかりだ。
上述のような達者な自社物流倉庫でも「制服における靴のモンダイ」には四苦八苦で紆余曲折のまま今に至るのだという。読者諸氏はすでにお察しのとおり、作業内容や歩行距離によって靴の善し悪しの評価が違ってくるからに他ならない。
で、そんな厄介事を解決したのは、ひとりの若手現場担当者だった、、、プロジェクト・バツ、じゃなくってプロジェクトxさながらの、、、てなハナシでもなかったようだ。
現場の数多い問題は人由来であることがほとんどを占める。具体的な諍いや衝突や不仲を見聞きすることは稀で、もしあるとしても小競り合いや小言や小声の嫌味程度に違いない。
機能不全や障害の第一因は負の感情が相対することで生じる空気感が塊のようになって現場に横たわっているから、というのはワタクシ流の表現。言い表し方は十人十色だと思う。
さほど多くない新人研修での講師経験ではあるが、その企業の経営層からお褒めの言葉を頂戴したハナシがいくつかある。
なかでも印象的な反応が例外なくあったのは「誤出荷の生まれる場所-物流現場の地震みち」「どうして物流業務は人気がないのか」というふたつの演目。
永田利紀(ながたとしき)
大阪 泉州育ち。
1988年慶應義塾大学卒業
企業の物流業務改善、物流業務研修、セミナー講師などの実績多数。
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